うつ病とは、自分が見えなくなる病、なのかもしれないと私は思いました。
私は20代前半の頃、眠れない症状に悩まされ、
親につれられて専門の病院に行ったのがきっかけで
自分がうつ病だと知りました。
自律神経失調症、と診断された時には、何それ、と思いました。
ただ当時はとにかくこのだるい感じをなんとかしてほしい、
そればかりだったので、どこか他人事だったのを覚えています。
特に熱が出るなどの病気のような症状でもないので、
家族は、甘えてるからだ、などとただただ私を叱るばかりでした。
眠れていなかったのもあったので私の気性も荒くなっていたのでしょう。
家族に対して、ざまぁみろ、私は病気だったじゃん、
とどこか優越感も感じていました。
それから投薬治療が始まりました。
睡眠導入剤や精神安定剤でした。
睡眠に関しては私は助かる、と思いましたが、精神安定剤は何の役に立つんだろうと
1、2回飲んだところで私はその薬を飲むのを自ら止めました。
薬のおかげで少しは眠れるようになりましたが、次の診察、
カウンセリングではあまりいい結果ではなかったようで、
薬が増えた時には驚きました。
眠れているのにどうしてだろう。
不安を抑える薬って何故だろう、と頭の中がハテナだらけになりました。
やっぱり私は薬を飲みませんでした。
家族、母親はちゃんと薬を飲みなさい、と言うばかりでした。
逆に父親は、しっかりしろ、何でお前はそうなんだ、と言うばかりでした。
医師が言う事も、親が言う事も、自分の思いも全部がちぐはぐになったのがこの時です。
何もかも嫌だな、と、ふらっ、と私は夜中、散歩に出かけました。
眠れないし、家にいるのも億劫、と、
本当にただの散歩のつもりでしたが、家族はそう思っていませんでした。
家族は私が自殺すると思っていたのです。
罵倒され、叩かれ、そこで私はうつ病で、そういう危険性がある、と初めて自覚しました。
その事があってから集中的に治療しましょう、と入院する事になりました。
隔離された病棟には似たような精神疾患を持つ患者さんが多くいて、正直息がつまりました。
知らない人、変な行動をする人、夜中叫ぶ人、
様々な症状を目の当たりにして私の不眠は悪化したように思いました。
処方されていた薬よりも強い薬なのか、気分が悪くなる事もしばしばでした。
ただこうも思いました。
私は、ここにいる入院患者よりもましなのかもしれない、と。
今思えばとても失礼で、なんて考えだと思います。
ですがそう思ってからは自分をしっかりとする事が出来たのです。
寝るって普通の事だ、心配してくれるのも家族だからだ。
些細な変化ですが、これがよかったらしく、
徐々に薬も減っていって約1か月で退院する事が出来ました。
思い返してみればこの時の私は人が嫌いで仕方がなかったようです。
後の診察の時、医師は丸椅子の上で体育座りをしました。
窮屈そうだな、と私が首を傾げて見ていると
「これはあなたが私達の前でずっとしていた座り方です」と言いました。
体を縮めて自分の体を守るように、そして目線は一度も合ってませんでしたよ、
と医師は笑っていました。
私は自分がそうしていたなんて、全く知りませんでした。
自覚もなく、本当の無意識でそうしていたらしいのです。
うつ病とは、自分が見えなくなる病、なのかもしれないと私は思いました。
自律神経失調症と診断されてから数年、今はもう薬も処方されていませんし、
クリニックにも行っていません。
私個人のうつ病改善策ではありますが、当時の事を思い出すのが私にとって、
一番の改善になっていると思います。
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